筋トレ大好きお兄さん


出演:ハルト、リク






 突然だが、俺は筋トレが大好きだ。愛していると言ってもいい。
 いろいろなことが俺の人生にあったが、どん底に落ちた時に出会ったのが、この筋トレであった。
 今思えば、教えてくれた人物はただの筋肉バカだったのかもしれない。
 でも、身体を動かしている間は余計なことを考えずに済んだし、努力が身体に反映され、鍛えられていくことを実感できる『達成感』とも呼べるそれは、俺に大きな幸福感を与えてくれた。自信もつき、剣士としての腕も上がったし。
 強くなったという確信があったのだ。
 今は守るべき大切な人もでき、ますます筋トレに精が出る。

 ……あまりやりすぎるとボディービルダーに転職しかねないので、ほどよく……だが。



「おう、ハル」
「ん? あぁ、リクか」
 近所のジムでダンベルトレーニングの最中、友人である(いや、悪友と呼ぶべきかもしれない)リクが俺に声をかけた。
「ここで会うのは久しぶりだな。今来たのか?」
 リクは俺よりもゆるいペースでジムに通っており、昔は会うことも多かったが、最近はめっきり見かける機会が減っていた。
「毎日通ってる筋肉様と違って、俺はいろいろと忙しいんだよ」
「筋トレより大事な用事なんてあるのか?」
「やっべーマジやっべーよこの人。病気か?」
「筋肉なめんなよ? あぁ?」
 一触即発みたいな雰囲気を醸し出してみるが、俺とリクの間ではよくあるやり取りである。
 実を言えば、本格的な喧嘩はしたことがないのかもしれない。

「あーあ、怖い怖い。俺はあっちでのんびりやってくよ」
「おう、勝負だな」
「いや、人の話聞いてた? 勝負何て一言も言ってないからね?」
「何やるんだ? スクワットか? シットアップか?」
「いやいや、もう黙ってダンベルと戯れてもらっていい?」
「おお、ダンベルで勝負だな!」
「もうやだこの人」

 ほら、こんなやり取りも通常運行だ。
 お互いに冗談半分で進んでいく会話が、どんどんエスカレートしていく。
 おそらくこんな無茶苦茶なやり取りができるのも、この悪友くらいだろう。


 その後も、結局一緒にトレーニングに励み、最高の汗を流すのだった。



〜END〜

 

 

 

 

 

2017.04.29

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